こんにちは!yattyuです。
今回は狩猟で使うためのアマチュア無線機について。
アマチュア無線に関する情報はYouTubeやブログなどで検索するとそれなりに出てきます。
ただ、無線の情報を発信する人は基本的に無線通信それ自体が趣味なので、狩猟で実用的かどうかは関係なく、無線マニアしか分からない世界の話が多い印象。
逆にハンター目線での情報を探しても無線に関する情報は少ない。
という事で、
狩猟も無線も素人の私が色々と調べて妄想してきた考えと流れを纏めましたので
狩猟用で無線機を考える方の参考になれば幸いです。
実際に使ってみてどうかは、これから狩猟や管理捕獲等で使ってみて、またアップしようと思います。
アマチュア無線機の必要性
まず無線機の必要性について。
狩猟において無線機はグループ猟をする際の、複数人でコミュニケーションを取る手段として使います。よって、わな猟しかしない人や犬を使って単独で捕獲する人は必要ありません。
グループ猟でも現代ならスマホでグループLINE、ボイスチャットでも何とかなるかも知れません。
それでも、山奥だと基地局と繋がらない(圏外)場合だったり、
一刻を争う時でも瞬時に広範囲に声を伝える という点においてはまだ無線機に優位性がある部分もあると思います。
あとは高齢の先輩ハンター方がスマホを使いこなせるか?という問題も。。
一般的にトランシーバーと呼ばれるものは(私が知る範囲で)大きく3種類あり、
簡単に表にまとめました。(2025年6月時点)
① アマチュア無線 | ② デジタル簡易無線 | ③ 特定小電力無線 | |
送信出力 | 5W (ハンディ機) | 5W | 0.01W |
無線免許 | 必要 | 不要 | 不要 |
開局 | 必要 | 必要 | 不要 |
周波数 | 144MHz帯 430MHz帯 | 351MHz帯 (467MHz帯)業務用 | 420~440MHz帯 |
③特定小電力無線は、無線免許も開局も不要で、買えばすぐに使えるのがメリット。
しかし出力が0.01Wという事で、200mくらいしか飛ばないという事で狩猟では使えませんね。
交通の誘導とかイベントスタッフ同士の連絡手段などで使われるそうです。
出力が小さいから他の電波に迷惑をかけるリスクが少なく、免許も開局も不要という事です。
②デジタル簡易無線は開局申請さえすれば、無線免許不要で使えるのはメリット。
最近は猟隊全員でデジタル簡易無線に買い替える所もあるとか。
アマチュア無線で義務づけられている、10分に1回以上言わなければいけない”コールサイン”も不要。
①アマチュア無線は免許も開局も必要という事で、デジ簡と比べて手間とコストがかかります。メリットとしては、144MHz帯が使える事でしょうか。
なぜ144MHz帯が良いかというと、周波数(Hz数)が低い方が電波が曲がりやすいからです。
電波の曲がり方のイメージを図にします。

電波は周波数(Hz数)が高い方が真っすぐ飛ぶ性質があり、
逆に周波数が低い電波は曲がりやすい(回析するという)。
山や尾根の向こう側の相手との通信だったり、森に囲まれた中で通信する状況では
周波数が低い電波の方が、より曲がってくれて遠距離の通信に有利となります。
家の中のWi-Fiでも5GHzの電波より、2.4GHzの方が遠くの部屋まで届きますよね
ただ、デジタル簡易無線でグループ猟ができないのか?というと使っている猟隊もあるわけで、参加する猟隊が使っている無線機に合わせるというのが実態の様です。
無線機は3万円くらいしますので、元から使っている全員に買い替えろと言うのも難しい話。
私が所属する猟友会の人に聞いたらこの辺りは皆さんアマチュア無線だったという事です。
無線免許と開局が必要
アマチュア無線で通信するまでの流れとしては、
無線免許取得 → 無線機購入 → 開局申請
①無線免許取得
アマチュア無線機を使うには試験を受けて合格し、免許を持つ必要があります。
名前は正式にはアマチュア無線技士免許。
免許を持たずに無線機を所持や交信して摘発された事例は多く、
それくらい電波ってしっかり監視されています。
無線通信はTV、スマホ、WiFi、Bluetooth、航空、船舶、鉄道、衛星、ドローン などなど、
さまざまな物に電波は使われていて、用途ごとに使える周波数や強さが法律で決まっている。
使い方を間違えると社会全体に影響が出てしまうので細かいルールと免許制度があるんです。
無線免許取得については過去に記事にしていますので、よろしければご覧ください。

テキストを1冊買って勉強すれば社会人でも1ヶ月程度、
小中学生でも取れるレベルと言われています。
殆どのハンディ機は5W出力のため、4級アマチュア無線免許(20Wまで使える)があればOKですが、少し頑張って3級(50Wまで使える)まで取っておくと、車に高出力の無線機(モービル機)を載せて中継したりなど、活用の幅が広がります。
アマチュア無線の免許はCBT試験で受験できるようになっていて、
近所の受験センターの空きがあれば、申込み → 受験 → 合格 → 免許交付 まで2ヶ月くらいで完了出来るはず。
②開局申請
開局するというのは、無線電波の発信元(局)として、総務省に届け出て登録と許可を受ける事です。
こちらも総務省のWEBサイトで電波利用電子申請という形で手続きが出来る様になっています。

開局手順の詳細は割愛しますので、興味がある方は電波利用申請のサイトを見てみてください。
ざっくり流れとしては
アカウント登録 → 使用する機器の申請 → 申請手数料(2900円)の納付
という事で問題なければ1ヶ月以内で完了します。
開局が完了すると、↓の様な無線局の免状が届き、電波利用料としてアマチュア無線は300円/年をお支払い。

右上に書かれているのが私の識別番号、いわゆるコールサインでJS2SPI らしいです。ちなみに無線従事者の免許は1回取れば生涯更新不要で使えて、無線局は5年で更新が必要。
送られてきた書類の中に、電波利用料の一覧がありました。アマチュア無線は上記の通り300円/年で、他の電波の使用料も記載があったので見てみると・・・

TVの電波で条件によっては6億円/年くらいかかる物もあるんですね。
小数点があるのか、ケタの数え間違いかと思い、何度か数え直しました。恐ろしい。
システムに求める事
狩猟で無線を使う場合、無線機本体だけではなく周辺機器も必要。
無線機とその周辺機器を含めてここでは「システム」と書きます。
私がグループ猟で無線機システムで重視したポイントは
① デュアルバンド対応 (144MHz, 430MHz両方つかえる)
② 防水
③ 防音イヤーマフとつなげて使う
①デュアルバンド対応と②防水については、上記の周波数の条件に加えて屋外で使う事も考えると、必須かなと。デュアルバンドで防水対応無線機もメーカー各社からあります。
ちょっとややこしいのが ③防音イヤーマフとつなげて使う。これは個人な希望で、
イヤーマフというのはこんな感じの物。
あくまで一般的な話として環境を説明すると、
・射撃場で撃つ時には鼓膜を守るために防音のイヤーマフを使う
・猟場では獣の音を聞くためにイヤーマフを使わず、
無線機に有線のイヤホンを繋いで、無線のやり取りを行う
私がこれまで見た人は大体このパターン。これの何が問題かというと、
猟場でイヤーマフを付けずに撃つと自分の射撃音が直接耳に入ってきます。
回数としては、射撃場で撃つよりも猟場で撃つ方が圧倒的に少ないのですが、
長い期間くり返す事で、ジワジワと難聴に繋がるのでは??という、漠然とした不安があります。
とある研究データによると、猟銃の射撃音は150dBを超えるとの事。
飛行機のジェットエンジン近くの音が130dBと言われているので、猟銃の射撃音がいかにバカうるさいかがわかります。
幸いなことに、現代の世には実用面で欲しいと思うほとんどのモノは存在しています。
イヤーマフには電子式と非電子式があり、
電子式イヤーマフはノイキャンイヤホンのイメージで、
周囲の音や会話は聞こえつつも、一定の音圧以上の音が入ると音を減衰してくれる優れもの。
そして電子式のイヤーマフにはイヤホンジャックが付いている物もあって、
無線機とイヤーマフを有線で繋ぐと…
無線通信しながら、周りの音も聞こえつつ、射撃の爆音だけ軽減してくれる
という都合が良いシステムが出来ると考えました。
選んだシステム
上記の条件を満たすシステムとして、下記の物を選びました。
①無線機本体 八重洲無線 VX-6
デュアルバンドで防水であれば何でも良かったので、
狩猟をする方の情報でちょくちょく名前が出てくるVX-6。


機能が多いので全て使いこなすのは無理だと思いますが、
周波数はボタンやダイヤルで直感的に合わせられるし、普通に通信するだけならとても簡単です。
例えば使いたいのが144.30Mhzなら、電源を入れてキーの1 4 4 3 0 と押すだけ。
メーカーのウェブサイトを見ると標準価格 44,800\、
通販サイトだと実勢28,000\くらいでしょうか。
最初から3万円弱の新品を買うのはちょっとしんどかったので、メルカリで中古品を購入しました。
②ハンディマイク
基本、無線機本体はポケットに入れて、通話はハンディマイクを通して行うらしいです。
イヤホン(イヤーマフ)はこのハンディマイクに接続。
イヤホンを差さないと無線の音がダダもれになり、付近の獣も逃げてしまいますね。

③イヤーマフ
イヤーマフはこちら。

音量が82dBを超えると外部の音を22dB軽減してくれる電子イヤーマフ。
これは無線機を考える前から射撃場での練習用に買っていたもので、
3.5mmジャックは意図せず付いていた形です。
ライフル射撃場の射台は閉鎖的な空間になっているので音が逃げず、
他の人の射撃時にはイヤーマフを付けていてもうるさすぎて、”ビクッ”としてしまいます。
全て繋ぐとこんな感じ。

一応、電源を入れてみて左耳から無線機の音は聞こえてきました。
あとは、猟場でイヤーマフを付けていて邪魔にならないか、
無線機の音を聞きつつも周囲の音が適度に聞こえるか・・・
実際の使用感の確認はこれからです。
余談:アマチュア無線は絶滅危惧種
アマチュア無線は絶滅危惧種なんです。
アマチュア無線関連の情報を発信するサイトhamlifeによると、
2025年4月末時点でアマチュア無線局数は約34万局との事。
ピーク時の1995年には134万局あったそうで、それと比べると100万局減って実に4分の1になっています。
直近20年の推移が掲載されていましたので引用させていただきます。
グラフを見ただけでもどんどん減っているのが分かりますよね。

ピーク時の1995年頃というと、スマホはおろか携帯電話があるか?どうかという頃なので、基地局を必要としないアマチュア無線もそれなりに有力な通信手段であったはずです。
2012年からしばらく横ばいなのは東日本大震災の影響かな?仮にそうだとすると
2017年からまた減り始めているので、5年もすれば大災害も忘れてしまうという事でしょうか。
毎月だいたい1000局ずつ減少しているので、単純計算すると20数年で絶滅することに。
生活する上では完全にスマホで十分ですし、
圏外なら衛星電話やスターリンクなども選択肢があります。
業務で使う事を除くと、それこそ無線が趣味目的の人、狩猟で古くから無線を使うグループ、一部の登山家くらいしか使わないでしょうな。ハンターも年々減っている訳ですし、
使い手のモラルの問題もあるのかもしれませんが、もう少しアマチュア無線が使いやすい仕組みや制度だったらなぁ~。
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