山岳会に入るかどうか

これから山を始める方や、新しい登り方にステップアップしたい方は、
いわゆる”山岳会”に入るかどうかを検討された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「山岳会って実際のところどうなの?」という疑問に対して、
どんな組織や雰囲気なのか、山岳会に所属するメリット、注意点などを
私が2年間、山岳会に所属した経験を元に紹介します。

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山をテーマにした会はいろいろある

山に行く仲間を集う方法として、その目的に応じて多岐に渡ります。
代表的なのは
・山岳会 (学生は山岳部やワンゲルも)
・登山サークル
・マッチングサービス 

まったく知らない方からすると、名前のイメージから
・山岳会       …ガチムチ体育会系
・登山サークル    …ゆるふわ程々系
・マッチングサービス …山は手段、目的は出会い系

といった感じでしょうか。
実際は必ずしもそうではく、山岳会でもハイキング中心に活動する会もありますし、
サークルでも気の合う仲間とがっつりクライミングや雪山をされるところもあるでしょう。
また、規模の大きいサークルでは全国で1000人くらい所属するものもあるようです。
まず全員の顔と名前を覚えられませんね。
複数の会やサークルに所属する方もいます。

山岳会にもいろいろある

山岳会は大きく分けると2つの系統に分かれます。
「日本山岳・スポーツクライミング協会」通称“岳連(がくれん)”派の山岳会と
「日本勤労者山岳連盟」通称“労山(ろうざん)”派の山岳会です。
通称は私の会ではそう呼んでました。他では違うかもしれません。

■岳連リンク
 https://www.jma-sangaku.or.jp/
■労山リンク
 https://www.jwaf.jp/profile/index.html

ほとんどのスポーツにおいて、日本〇〇協会とか、日本〇〇連盟という組織はありますよね。
それと同じで、山岳会もそれが2つあり、セ・リーグとパ・リーグの様なものです。
それぞれの組織の下に、地方や県ごとの連盟があり、
その下に個々の山岳会があるイメージです。

岳連と労山、どちらがどうか?というのは正直わかりませんが、
これまでお会いした方々の印象からすると、
登山に必要な技術や知識の向上や、緊急時の相互連携など、
山を軸にした活動を目的とする組織である事は変わらないと思います。
ホームページを見ると、岳連が1849団体(46,650人)、労山が650団体(約25,000人)との事で、
人数では岳連の方が規模が大きい組織と言えます。

山岳会に入るメリット

1.知識、ノウハウを共有できる
2.信頼のある仲間と登れる
3.共用の装備が使える
4.いざという時の救助体制がある

1.知識・ノウハウを共有できる

まずやはりこれでしょう。
最近はネット、Youtubeでも山に関する知識やノウハウが溢れています。
しかし実際に、実体験を伴いながら学んだ知識や経験は密度が違います

この場合にどのあたりにテントを張るか、ロープの張り具合はどうか、ペース、
ルート選択、メンバーの疲れ具合… などなど、登山はその時々の状況に応じた判断の連続です。
何を見てどう判断すればよいのかは、ベテランと一緒に登ると非常に学ぶことが多いです。
ベテランは過去に失敗も重ねてきているので、失敗事例も大切なノウハウです。

2012年12月 八ヶ岳地蔵尾根にて

また、山岳会は先に述べた通り、全国的に組織化されています。
私が所属していた山岳会は愛知県の岳連に所属していましたので、
愛知県の岳連が主催する講習会にも何度か参加しました。
その辺にはなかなか居ない、より専門的な知識を持った方からの講習をタダで受けれます。
 ・救助訓練
 ・雪上訓練
 ・気象勉強会
 ・ロープワークの基本
 
これらの技術や知識は、無くても登れる事もあるでしょう。
ただ、知ってて使う必要が無いのと知らないのでは違いますよね。
さらに、自分の技術を後輩や新人に教える事で、自身の技術としても確かな物になります。

2.信頼のある仲間と登れる

山岳会の場合、ほとんどの人と一緒に登った事があるので、
お互いにどの人がどれくらいの技術があって、体力があって、どんな性格なのか、
どんな装備を持ってくるのか、大体わかります。
(共通装備はあらかじめ分担を決めて持ってくる)

なので、選ぶルートやペース、難易度など、いわゆる“波長”的なものが合わせられます。
目的とする山やスタイルがお互いに分かっているので、
会の中でも一緒にパーティを組むメンバーは固定化されてきますね。
(技術や体力関係なく登れる、月例山行というのも、月に2~3回くらい企画されていました)

3.共用の装備が使える

山岳会では会費の中から装備費用を積み立てて予算を決め、購入します。
例えばテント、ロープ、バーナーなど、初心者が個人で買うには少しハードルが高いものでも
共用の装備を借りて使うことができます。
運が良ければ先輩が使わなくなった道具を譲ってもらえることもあります。

冬に使えるテントは高い  引用:いらすとや様
4.いざという時の救助体制がある

“遭難したかもしれない” という事早く察知して、
現場に駆けつけることが出来るのも山岳会の強みです。

私が所属していた山岳会では、
登山届の提出と下山時のメール報告が必須のルールでした。
登山届があればルートを辿ることが出来ますし、下山しているはずの日に報告が無ければ、
遭難しているかもしれない と早く気づくことが出来るからです。

下山の連絡  引用:いらすとや様

仮に行方が分からなくなった場合、会のメンバーは仕事を休んででも捜索に行きます。
私が所属している期間では捜索に出る様な事案は発生しませんでしたが、
一度、会員が白馬の雪渓で何十メートルか滑落し、脚の骨を折るケガをした際には、
同行メンバーからの連絡を受け、数名の会員が愛知から救助に向かいました。

当然、山岳保険の加入も必須です。

山岳会に入る際の注意点

1.組織運営に関わる必要がある
2.ある程度の付き合いがある
3.多少のお金がかかる

1.組織運営に関わる必要がある

自治会、PTA、会社など皆同じように、組織が機能するための役割分担がありますよね。
会長、総務、会計等。
山岳会でもこれらの役以外に装備係、ホームページ係、リーダー会といった、
山岳会を運営するための役を、なにかしら担当します。
そういう役も前向きに楽しめると、山岳会での活動をより楽しめると思います。

2.ある程度の付き合いがある

山岳会によって変わると思いますが、山以外での交流もあります
主に山に行く計画や報告を行う例会、年度末に次年度の方針を決める総会といった、
基本的なミーティングに加えて、
地元市民と一緒になったハイキングイベントの運営、山岳祭(安全を祈願するイベント、主に飲み会)、忘年会といった、山とは関係無いイベントもあります。
私はこういったイベントにはあまり参加していませんでしたが
特に文句を言われたりという事はなかったです。

3.多少のお金がかかる

会を運営したり、共用の装備を購入するために、
私の会では1000円/月の会費を払っていました。
これを高いとみるか安いとみるかですが、
メンバーで乗り合いで山に行ければガソリン代や高速代を割り勘できるので、
トータルで見ればお得かもしれません。

多少のお金はかかる

山岳会の雰囲気ってどうなの?

山岳会に入るからには、それなりの技術や体力がないと肩身が狭い思いをしたりとか、
山に誘って貰えなかったりという事があるのかというと、それは一切ありません。
ハイキングだけで主に活動する人も居れば、沢好き、岩好き、アルパイン好き、
バックカントリーなど様々で、先輩方は基本的に親切で、教えるのが好きです。

結局はそこにいる「人」とマッチするかどうかなので、
同じような目的、スタイルで気が合うメンバーと巡り合えたらラッキーですし、
もし会に合わないと思ったら退会すればよいです。

私は夏山をソロで始め、冬をどうしよう悩んだ結果、やっぱりソロは不安だったので
山岳会の門を叩きました。
ベテランと一緒に冬山や岩を登る事で雪山を歩く感覚や自信が付きましたし、
その後、結婚して子供が出来た後は山に行く事自体が難しくなったためやむなく退会しました。

短期間(2年間)でも楽しくて学んだ事は多く、入会して良かったと思っています。
今でも近所の山で会のメンバーに会うと近況を話しますし、
仕事や家族以外でも、信頼できる人との繋がりが出来るという意味で、
お試しに参加しみてはいかがでしょうか。

以上、山岳会に入るかどうか でした。
 

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