登山の大事な要素 体力② (栄養補給)

山と体力① の記事の中で、登山がいかに体力(エネルギー)を消耗する活動であるかを書きました。
行動時間にもよりますが日帰りの装備で3000kcal以上、テント泊装備であれば6000kcalもの
エネルギー消費になります。

この膨大なエネルギー消費に対抗するには、しっかりと補給してやる必要があります。
せっかく登頂できても時間が遅くなってガスが上がって景色が見れなかったり、
クタクタのヘトヘトでは楽しめません。

エネルギー補給の考え方

必要なエネルギーに対して、一人の人間が発揮できるエネルギーは下の式になります。
チョット文字と計算が多くなります。

①体内に蓄えた速攻系エネルギー + ②脂肪の燃焼エネルギー + ③食事で補うエネルギー

①体内に蓄えた速攻系エネルギー
これは例えばクレアチンリン酸(PCr)やグリコーゲンがあります。
詳細は割愛しますが、標準で1500~2000kcalあるといわれています (参考リンク)
多くは筋肉に蓄えられ、激しい運動すると真っ先に消費されるエネルギーです。
例えば登山に行く前の日の晩ごはん、登る前の朝ごはんで摂取したエネルギーが①に当たります。
言わば筋肉に蓄えたエネルギーの貯金箱の様なイメージでしょうか。

絵:いらすとや様

②脂肪の燃焼エネルギー
登山は有酸素運動なので、常時脂肪を燃やしてエネルギーを補給します。
脂肪から1時間当たりどれくらいのエネルギーが補給できるのか、
滋賀県立大学の方の調査・報告が参考になりましたので、グラフ等を引用させていただきます。

まず、図2を見て頂くと、
短時間の激しい運動(左側)ほど、PCrやグリコーゲンなど、速攻系のエネルギー供給割合が大きく、   
逆に長時間で緩やかな運動(右側)ほど、有酸素系、つまり脂肪からのエネルギー供給が
大きくなっています。

このことから、①の速攻系エネルギー貯金を使わずに極力脂肪からエネルギーを供給するには、
出来る限り運動強度を上げないことが必要だと分かります。
登山に当てはめると、とにかくゆっくり登るとバテにくいという事です。

特に、登り始めはやる気と元気に満ち溢れていますから、ついペースが早くなりがちです。
そうすると速攻系エネルギー貯金を早く切り崩してしまう事になります。
はやる気持ちをグッと抑え、ゆっくり歩きましょう。

そして図3から、
グラフからのおおよその数値ですが、中強度の運動強度のエネルギー源として、
2種類の脂肪エネルギー「血中脂肪酸」「筋中脂肪酸」を足して 約90cak/kg/min です。
これを1時間で、72kg(私の体重) で換算すると、
    90×72kg×60min/1000=388kcal/h
脂肪から1時間あたり、388kcalのエネルギーを補給してくれる計算になりました。

中強度の運動の場合は筋グリコーゲンや血中グルコースからのエネルギー供給もあり、
その分が110cal/kg/min、同様に換算すると 475kcal/h の消耗です。

速攻系のエネルギーを1時間で475kcal消耗する場合、①のエネルギー貯金は
4~5時間で使い切ってしまう事になります。
図3の中強度の消費エネルギーの合計が約850kcal/hなので、
引用文献の”中強度”がどれくらいの負荷なのかは分かりませんが、
もう少しペースを落とす必要がありそうです。
 
③食事(行動食)で補給するエネルギー
食事のとり方は人それぞれ好みがあるので一概には言えませんが、
毎回火を使ってお湯を沸かして・・・というのは時間がかかりすぎて非効率です。
私含め、ほとんどの方はおにぎりやパン、エナジージェルなどの行動食繋いで目的地についてから
ガッツリ調理。というパターンではないでしょうか。

食べ物ごとの摂取エネルギー目安

私の場合、長時間にわたる登山の際には、50分歩いては5分~10分休憩、
というサイクルを繰り返す
ようにして、休憩の間に行動食や水分を摂ります。

登山の消費エネルギーからすると、休憩ごとに400kcalくらい補給したいところですが、
食べ物の消化スピードは限られているので、1時間毎におにぎりを2個食べれるほど
お腹はすきません。
ウィダーも案外、チャージできるエネルギーは少ないですし、飽きます。
いかに効率よく多くのエネルギーを摂取できるか、皆さん色々工夫されている部分かもしれません。
普段は、無駄に太らないようにカロリーを気にしなければならないのですが、
登山では食べれるだけ食べても全然足らないのです。

私は長時間の山行の場合、おにぎり、パン、サンドイッチ、スイーツ、おかし、ジェルなど
色々なものを織り交ぜて飽きないようにしています。
一番のお勧めはいなり寿司。のどが渇いていても食べやすくておすすめです。
行動食に必ず持っていきます。

タンパク質の補給も忘れない

必要な栄養素は、エネルギーだけではありません。
筋肉を酷使する登山では普段よりも増して、タンパク質の摂取も重要だと思います。
筋力の回復速度に影響してきますし、エネルギーが不足すると筋肉を分解してエネルギーを
賄ってしまう
からです。

 一般的に、成人に必要なたんぱく質の量は男性で1日60g、
 女性で50gと言われています。(参考リンク)

食べ物に含まれるタンパク質の量の目安

日常生活で普通に60gタンパク質を摂るだけでもしんどいのに、
スポーツする人(登山も当てはまると思います)はこの2倍くらい摂るのが理想なんだとか。
食品に含まれるたんぱく質の量は↑の表の通りで、
鶏肉や牛肉はタンパク質の量が多いものの、山に肉を持っていくのなんて、
冬山(氷点下)でなければ怖くて無理
です。

少しでも不足するタンパク質を補う方法として、私は
魚肉ソーセージサプリ系の補助食品(ソイジョイみたいなやつ)を持っていきます。
魚肉ソーセージ1本(80g)でタンパク質が8gくらい摂れます。

お腹いっぱいになってしまうかもしれませんが、行動食のおにぎり等の摂取に加え、
タンパク質もとるように心がけると、後々のダメージが少しでも軽減できるはずです。

以上、山と体力に関して、栄養補給について考えました。
行く予定の山はどれくらいの時間行動なのか、どの程度エネルギーを消費するのかが
分かってくると、持っていく食事(エネルギー)が見えてきますね。

次回は、山と体力の続編として、トレーニングについて書きたいと思います。
それでは!

コメント

タイトルとURLをコピーしました