山と遭難

まだ初心者の方やこれからステップアップしたい方は、
登山=遭難 というイメージを持たれている方もいらっしゃると思います。
雪山なんてなおさらですよね。

道迷い、転倒、滑落、低体温症、高山病、落石、雪崩、落雷
個人的には蜂に刺されるというのも、道迷いに次いでリスク高めだと思っています。

ここでは、登山の遭難リスクがどれくらい高いのか
また遭難のリスクを少しでも下げるにはどうしたら良いのかを統計データや経験を元に、
考えたいと思います。
今回は文字と引用グラフ多めです!

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登山の遭難は多いのか

まずこちらは、令和3年(2021年)の山岳遭難の概況です。
(警察庁HPに統計があります)
傾向としては増えているのが分かります

遭難者数の推移  警察庁HPより

ちなみに、遭難者数というのは、警察が捜査活動をしたかどうかでカウントされるそうです。

県ごとの件数を掲載するのはここでは割愛しますが、上位は
長野(257件)→北海道(197件)→東京都(157件)→神奈川(135件)→兵庫(126件)
中部山岳地域が突出して多いのかと思いきや、東京都が3位であるのが意外でした。
我が静岡県は72件で意外に少なく、2020年以降はコロナ影響(富士山の閉山や県外への移動規制)
などで、県外からの登山者が少なかったのかもしれません。 

目的では登山に次いで山菜取りが多い

登山における道迷いの遭難が多いことが分かります。
「その他」には転落や悪天候、野生動物襲撃、落石、雪崩などが含まれます。
滑落と転落って違うんですね、初めて知りました。

実際にあった道迷い遭難の事例を元に、遭難に至った経緯や心理状態を分かりやすく
詳しく解説した本があるので下にリンクを張っておきます。
文字メインですが、テレビのニュースでは紹介されないような細かい所まで
非常にリアルに描写されており、「絶対に遭難したくない」と身が引き締まります。

さらに年齢別でみると下の通り、
70代(23%) → 60代(18%) → 50代(17%) という事で50歳以上で65%を占める形です。
これは加齢による体力の低下もあるかと思いますが、
そもそも山に行く人の年齢の比率と一致するような気がします。 

登山者は60歳以上で約半数を占める

平成23年のデータで、年齢別の登山者人数の統計がありました。
総務省統計局のデータです。 (総務省統計局リンク)
執筆時点(2022年)に合わせると11年違いですので、
2段分グラフを右にずらせば現在の状況が推定できます。

60歳以上の高齢者の登山者が多い

さすがに当時70代の方(今は80代)で今も継続する人は減っているでしょうけど、
それでも60~64歳、65~69歳が多いことを考えると、そもそも登山者における高齢者が割合が高いのです。
定年退職して時間もお金もあれば、そりゃ山にでも行きたくなるのも当然だと思います。
高齢者だけの遭難が増えている訳でもないことがわかりました。
 

キリがかかった山

という事は、登山人口全体としてが増えているから、比例して遭難数も増えているのか!?
・・・そんなことはありませんでした。

レジャー白書より 登山者数(紺色の線)は右肩下がりで減っている

登山者数はジワジワ減っています。
2011年に810万人だったのが、2020年には460万人へと約40%の減少しています。
っていうか、本当に日本人のほぼ15人に1人の810万人も登山していたのか?延べ人数??
延べ人数にしろ実人数にしろ、山に行く回数は減っているという事で、
つまり登山人口は減っているのに遭難件数は増えている事になりました。
 
考えられるのは登山者の質の低下か、スマホ普及で安易に救助要請がしやすくなったか。
安易に救助要請というのも質の低下に関わっているのかもしれないですが、
現状で見つかるデータから考えるに、登山者の質の低下以外に説明がつかない状況です。

山岳遭難と他の事故の違い

山だけでなく、他の様々なレジャーや日常の中にも事故のリスクはありますよね。
海や川の事故、交通事故、紛争・戦争、ガン・糖尿・肺炎・肥満・脳卒中、通り魔、DV・・・
家の中ですら絶対安全なんてあり得ない世の中、何で山の遭難が問題になるのか

それはやっぱり、捜索しなきゃいけないという事に尽きると思います。
「遭難してますが探さないでください」では通用せず、
生きていても死んでいても、生きている事を祈りつつ広大な山の中から探し出さなければなりません。
延べ何百人も、何日もかけて捜索するエネルギーとコストは膨大です。
よって登山では遭難するリスクを最低限に抑える努力が求められます。
単独行であれば特に。

以下、月並みな内容にはなりますが、遭難しないためにどうしたら良いか。
私が思う事を書きます。
絶対安全はありません。あくまで、リスクをミニマム化する努力と対策です。

①計画をしっかり練る +登山届を提出する +家族に周知する
②体力をつけてから行く
③天気に逆らわない
④行動時間に余裕を持つ⑤文明の利器は可能な限り使う

計画をしっかり練る

自分がその日にどのルートを何時間歩けば目的地につくのか、
どれくらいの標高差で、どれくらい水分と栄養補給するのか、気温は、風はあるか
何時間毎に休憩するのか、山小屋はあるのか
途中で天気が悪くなったらどこでやり過ごすのか、
地図を見なくても現在地が分かるくらい、地図を見て計画を考えるんです。

そして計画を立てると同時に、登山届は200%提出してください
登山届は形式ばった形でなくても結構です。
オンラインでも、スマホアプリでも提出できるものもあります。
ルート、持ち物、連絡先、緊急連絡先が書いてあれば捜索スタートできます。
登山届が無いとどこも探せませんし、家族も事前に聞いた山の名前なんてわかりません。
 
そして家族にも、独身なら親や知人や同僚でもいいので、
計画書のコピーを置いて山に行く事を伝えてください。
登山届200%提出はこの意味です。山と知人。
予定の日に連絡なしで帰らなければ、あるいは月曜日に出社しなければ遭難確定です。
山に行く事を伝えていなければ、「あれ、寝坊したのかな?体調悪いのかな??」で終わります。
普段の行いにもよりますが・・・

計画をしっかり立てておくと、全体の工程における自分の立ち位置が客観的に分かります。
初心者だからと言って、工程は経験者に任せて付いて行くだけ というは危険です
何かあったときに、リーダーや経験者を責めたところでどうにもなりません。
リーダーやガイドに任せるというのも、個々の判断の一つです。任せる責任があると思います。
一人でも登れるくらい、計画を自分自身が理解する必要があります。

体力をつけてから行く

体力登山を成功させる3要素の1つです。
体力の重要性は以前の山と体力という記事で書きました。

遭難要因の上位に、道迷いや滑落、転落や転倒といった項目があります。
これらの遭難に至った要因として、体力不足と悪天候が少なからず影響していると、私は見ています。
体力があれば引き返す余裕があったり、体力が無い為に疲れて踏ん張りが効かずに転倒してしまう、
といった形です。
登山自体でも体力はつきますが、
その山に挑むだけの体力は事前に付けておく必要があります。

天気に逆らわない

天気については、登山を成功させる3要素として後日作成しますのでここでは細かい事は割愛します。
天気の悪い日にわざわざ登る人なんているのか?と思うかもしれません。
います。

山の悪天候の怖さは、平地では体験し得ないので、体験しないと分からないかもしれません。
危ないと分かっていても、何かに背中を押されて登ってしまう人がいるのが事実。
仮に登れたとしても、絶対にいい思い出にはなりません。約束します。
運よく登れて得るものの割に、失った時のリスクが大きすぎます。

行動時間に余裕を持つ

皆さんは目的地に何時くらいに着く予定で計画を立てるでしょうか?
目的地は山頂や山小屋や、縦走やピストンであれば登山口に下りてくるなど、
その日の活動を終了する時間の事です。

私は遅くとも正午までにその日の工程を終える様に計画を立てます。
何かしらのトラブルがあっても、その日のうちに対処できる可能性が残りますし、
どちらにしても夏の午後、山は雲に包まれてしまいますので、
景色も何も見えなくなり、運が悪いと夕立や落雷に遭います。

夏の午後はだいたい天気が崩れる

1泊2日の場合、山小屋やテント場でいい場所を確保できますし、
次の日に備えて食事や休息して、自然の中で何もしない贅沢な時間を過ごせます。

文明の利器を可能な限り使う

ずばりスマホやGPSの活用です。
紙の地図とコンパスもお守り程度で持っていきますが、今ではスマホで見るのが基本になっています。
私は記録用にYAMAPという登山アプリを起動させています。
あらかじめダウンロードした地図にGPSを重ねてくれるので、現在地がわかります。
有料会員になると「みまもり機能」が使えて、
指定した人にGPSデータがリアルタイムで共有されるのです。(電波が届く場合のみ)
 
なかなか登山に対する家族の理解が得られにくい場合、みまもり機能は
家族を少しでも安心させる材料になります。
 ※私の場合、南アルプス南部でこれを試し、標高2000mくらいまで圏外だったため、
  逆に心配をかける結果になってしまいました。
  電波が届く場合に有効な機能です。

注意点は、登山アプリでGPSを記録していると、バッテリーの減りが早い事。
2020年製の4000mAのバッテリーのスマホで、アプリ連続起動で14時間くらいで
バッテリーのが上がります。
日帰り~1泊であれば、5,000mA~10,000mAくらいのモバイルバッテリーがあると安心です。
私が使っているのはアンカーのモバイルバッテリーです。 

遭難したと思ったとき

これについては私もまだ勉強不足です。
道迷いかも、と思ったときの基本的な対処法はイメージがありますが、
いろんなパターンの遭難があるので、
今後別の記事で様々なパターンを想定して考えたいと思います。

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