【南アルプス】転付峠の下見散策 (登れば天国)

こんにちは!!yattyuです。

今回は南アルプス南部の転付峠(でんつくとうげ)の下見に行ってきました。
“伝付峠”とも書くらしいです。
最近の目標は塩見岳の少し南東にある蝙蝠岳(こうもりだけ)に行く事で、
蝙蝠岳がある蝙蝠尾根へのアプローチを色々と考えています。

蝙蝠岳へのアクセスと転付峠について

地図にザックリ位置関係を書き込んだのが↓の図です。

蝙蝠尾根へのアクセスする選択肢としては、
①畑薙ダムから大井川沿いにひたすら7時間くらい?林道を歩く
②鳥倉登山口から三伏峠、塩見岳を経由する
③新倉登山口から転付峠、二軒小屋を経由する

の3つが主なルートかと思います。

①畑薙ダム起点のルートは、過去に椹島ロッジから畑薙ダムまで歩いたことがあるのですが、
約20km、変化の少ない単調な林道歩きは精神的にもかなりシンドイので出来れば避けたい。

②鳥倉起点のルートは塩見岳経由でこれはこれで楽しいのですが、
週末で行くには距離が長すぎるのと、蝙蝠尾根はできれば上からではなく下から登りたいので却下

③新倉から転付峠を経由するルートは歩く距離的には短いが、未経験のルート。
もしかしたら南アルプス南部の中核への大幅なショートカットになるのでは??
という疑問と期待から、転付峠の下見に行ってきました。
転付峠、南アルプスにあまり来られない方は聞いたことも無いかもしれませんが、
南アルプスを開拓する歴史の中では、結構歴史のあるルートらしいです。

転付峠を経由する「伊奈街道」は、巨大な南アルプスに分断された長野の伊那谷と、山梨の富士川谷を繋ぐルートとして、明治19年頃に整備されたが、保守管理が追い付かず数年で廃止。
新倉→転付峠→二軒小屋→大井川西俣→三伏峠→鳥倉というルートだったそう。
重機やヘリもない時代にこのルートを作ろうと思ったのが設計段階から凄い。

以下、ルートの解説です。

新倉~転付峠ルート

2023年4月9日に行った記録です。
GPSデータはYAMAPに上げてますので、そちらもご参考くださいませ。

転付峠(白根南嶺) 散策-2023-04-09 / yattyuさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ

転付峠 標高1,986m
体力度 ★★★★☆ 日帰り (累計標高差 1,860m)
技術度 ★★★☆☆ ザレ場多し、道迷い注意
登山口 新倉

登山口は山梨県早川町の新倉です。
10~12台くらいは停めれると思います。

駐車場は北岳の玄関口である奈良田温泉に向かう南アルプス街道の途中、
トンネルとトンネルの間に突然現れます。Googleマップではこちら。

ちなみに駐車場はDocomoの電波は圏外でした。
この後、転付峠手前まで基本的にスマホは圏外です。
そして新倉には登山届を出すポストもありませんので、
登山届は事前に家族かオンラインで提出しておきましょう!

登山者がそれだけ少ないという事でしょうか。
今回、日曜日でしたが往復8時間で人に会う事はありませんでした。

駐車場のすぐ横に湧水が汲める場所があります。
スッキリとした中に、しっかりとミネラル分が感じられます。
帰り際に喉カラカラの状態で飲んだら、体に染み渡ることでしょう。

駐車場を出ると3kmほどの林道歩きが続きます。
林道は舗装されていますが、登山口から林道の終点まで40分で300mほど標高を上げます。
自転車を持ち込んでも楽になる様な斜度ではないので、シンプルに歩く方が良いです。

20分ほど進むとヘリポートがあり、ヘリポート周辺はかなり開けてますので、
ここまで車で来れると思います。駐車場とは書いていないので、本当に停めて良い場所かどうかは
わかりません。

↓は林道の終点。
林道の終点付近はクルマを停められそうな場所はありませんでした。
登山に来ておきながら、出来るだけ車で前に進めたいという矛盾です。

林道終点から先は崩落が進んでおり、
崩れかけの林道や沢の渡渉を繰り返しながら、田代第二発電所まで進んでいきます。
雨の後で沢が増水しているときは要注意です。
基本的に赤符を辿って行けば大丈夫ですが、赤符が付いた木が流されている事もあります。

一定距離間で赤符があるので、日が出ている時間であれば大丈夫そう。
両側から崩れて、真ん中に残った尾根が取り付き場所。
南アルプスって感じです。

尾根に取り付いて少し登った先が↓の状態。
斜面の大部分が流されてしまっており、ザレザレです。
写真では伝わりにくいのですが、歩くたびに砂が崩れて安定せず、緊張感があります。
フィックスロープがあり、ロープを使わないと登るが厳しい。下りは尚更怖い。

上から見様子がこちら。
あと2回くらい大き目の台風が来たら、この道も無くなってしまいそうなくらい脆いルート。

尾根に取り付く標高950m~1500mくらいまでの間、
ザレ場の直登やトラバースの連続で、この間に精神的に結構やられます。
またロープに頼って進むことが多く、腕も筋肉痛になるのは間違いないでしょう。

↓の写真は途中標高1200m付近での写真。

ルート進行方向に向かった撮った写真なのですが、中盤はルートが分かりにくいです。
登山者が少ないためか、ただでさえ薄いトレースに落ち葉が被さって、
赤符や進むべき方向を頼りに慎重にルートを見極める必要があります。
今はスマホのGPSがあるので、バッテリーが持つ間は大丈夫ですが仮に間違えたとしても
早めに気付ける感覚は必要です。

また、倒木を跨いだりくぐったり、枝をかき分けながら進む場所もあるので
手袋があると良いです。

一見不安定そうな橋を渡る。意外に安定しています。

スタートから約2時間半、標高1300mの所に「保利沢小屋」と呼ばれる
東京電力の管理小屋に着きます。
以前は写真の小屋以外にも幾つか建屋が有った様で、まるで山小屋のテン場の様に
段違いで開けたスペースが幾つもあります。

こんな奥地に重機も入れないでしょうし、整地したり資材を運んできたり、
電力を得るための人の努力って本当に凄いと思います。

ちなみに田代発電所は、山の向こう側(静岡県)にある大井川の田代ダムから山梨県の早川まで
水を引いてくるという、冷静に考えるととんでもない構想のダムで、1928年に完成。
だから「田代」発電所が山梨側にあるんですね。
田代発電所に水を流す事で大井川の水量は減少し、
その後も大井川水系では複数のダムが建設された結果、一時は大井川の水が完全に枯れたそう。
大井川流域住民vs電力会社の協議で水が戻った。など大井川水系には紆余曲折があり、
最近何かと話題になっている静岡県vsJR東海のリニア建設で問題なっている水問題ですが、
住民、電力会社、JRなどが絡んで複雑な話であり、
「静岡県にのぞみが停まらない事への仕返し」と言うような単純な話では無いようです。

へしゃげた橋に添えられた木。
濡れてたら怖いなぁ・・・


管理小屋を超えて1450m辺りからが終盤、樹林帯の急登りが始まり転付峠まで標高を一気上げる。
ここからはルートは比較的明瞭でザレ場もないため、精神的には楽です。
心を無にして登れる、気持ちの良い区間。
夏場であれば木に葉がついて、日差しを遮ってくれるでしょう。

標高1800m付近までくると笹ゾーンに入り、峠が近いことを感じられます。
夏なら一面緑色になるのでしょうか。
この付近でスマホを確認すると電波がキャッチできました。docomo電波です。

笹があるだけに、鹿の痕跡も多数。
ルートに沿って物凄い量の糞がありますが鹿本体はどこにも見当たりませんでした。


転付峠の手前10分ほどの所に湧き水アリ。
水の味は非常にまろやかで、駐車場横にある新倉湧水よりもミネラル分は少なく感じます。
湧き水のすぐ横にはテン場跡らしきスペースもあります。
転付峠まで10分なので、峠で幕営しても水場までの往復は楽にできそう。

水場のすぐ横にある幕営適地。

そんなこんなで新倉の登山口から4時間半、標高差1500mほど登って転付峠に到着。
しっかりとした標柱があります。

他の人の記録でも見たのですが、峠付近の尾根は広く開かれており、
尾根のそこら中どこでも幕営ができそう。
人も少ない(この日は一人も会わず)ですし、沢の音も聞こえないので風が無ければ音は鳥の声くらい。
標高約2,000mで夏でも涼しく、静かに自然の中で過ごしたい方には天国のような場所。

西側には南アルプス主稜のボス達が並びます。
↓は恐らく千枚岳。
4月9日時点で、2500mより上はまだしっかり雪が残っている感じです。


転付峠から1時間ほど反対側に下ると二軒小屋に着きます。田代ダムがあるところですね。
今回はしんどくて行きませんでした(汗
それなりにランニング等はやってきたつもりでしたが、やっぱり累計1800m登ると結構疲れます。
その昔の伊奈街道が通って頃には、この転付峠と三伏峠、どちらも2000mレベルの峠を2回越えて
行き来していた事を考えると、東西の行き来って本当に大変だったんだと思います。

蝙蝠尾根へのアプローチとしての考察

今回、下見で登ってきた訳ですが、
本来の私の目的である蝙蝠尾根へのアプローチとしての私なりの結論は、
1泊の計画で行くにはしんどい。
2~3泊や白根南嶺散策の起点としてはアリ。

という事になります。

登山口~転付峠往復だけで1,800m以上の標高差がある点と、
中盤のザレ場の連続とルートファインディングで精神的な消耗もそれなりにあるので、
1泊2日で行くにはコスパが良くないです。

でも逆に考えると、
人が少なくて非常に静かであり、沢登山やザレ場、樹林帯や笹原などバリエーションに富んだ
南アルプス南部ならではのコアな山登りが楽しめる
 という見方も出来るため、
そのような登山を好んで求める場合にはピッタリのルートです。

1泊計画での蝙蝠尾根へのアプローチとしては沼平から林道を何時間も行くしか無いのかなぁ。
折り畳み自転車を持ち込んで時間短縮を図るというのも手ですが、
沼平(950m)から二軒小屋(1420m)まで約500mの標高差があるので、
自転車があれば楽になるか?と言うとそうでもない。
理想は電動アシスト付きのMTB!! ・・・高すぎますよねぇ。

蝙蝠尾根へは、2泊くらいで余裕を持って行ける時に沼平からゆっくり行こうと思います。

余談

余談①
新倉周辺ではフォッサマグナの西側の境界断層が見られる事でも有名です。
西側の境界断層というのが、糸魚川ー静岡構造線と呼ばれ、日本を南北に分断するほどの
大きな断層構造の境目です。

新倉付近では地面が隆起して、↓のように地層が見えているところが多くあります。

触ってみると非常に脆く、簡単に手でパキパキとはがれてしまうほど。
中盤ザレ場が多いのも納得できるほど脆い。

フォッサマグナについてはコチラが参考になりました。

フォッサマグナと日本列島 - フォッサマグナミュージアム Fossa Magna Museum - 新潟県糸魚川市のヒスイとフォッサマグナのことが楽しく学べる博物館
日本列島の真ん中には、大地をつくる地層を知ると見えてくる「大きな溝」があります。ドイツ人地質学者のナウマン博士がこの「大きな溝」を発見し、フォッサマグナと名づけました。フォッサマグナとは、ラテン語で「大きな溝」を意味します。


余談②
下山途中の林道で横たわった鹿を発見。(この日に初めて会った哺乳類)
下山するために横を通り過ぎようとすると、意識はハッキリとしているようで
人間(私)から逃げる為に立ち上がろうとしても立ち上がれずもがいていました。

上の崖から落ちたのでしょうか、前足が折れていると思われます。
鹿でも滑落してしまうほどの険しさという事ですね。

野生動物に対して今の私では何もしてあげられないので、大人しくその場を去ります。
いずれ、狩猟の対象として向き合う時が来るでしょう。

ハンターへの道① 狩猟免許取得 in静岡県
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余談③
今回の登山では、先日ワークマンで購入したAERO STRETCHクライミングパンツ(1900円)を
履いていきました。
このブログでも紹介しています。

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往復8時間を超える登山を通して感じた事は、
全く問題なく快適に使えるという事。
途中、枝に引っ掛けたりしても破れず、沢に足を突っ込んで濡れても直ぐに乾き、
軽くてストレッチ性も問題無し。
登山用ウエアとブランドの概念が変わった記念すべき日になりました。


という事で、今回は転付峠の記録でした。
南アルプスやその周辺って、本当に大きくて深くて新しい発見があって、興味が尽きないです。
これからも少しずつ、知っている領域を広げたいなーと思います。

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